2006年 08月 21日
麻生外相、出馬表明
麻生外相、出馬表明 ベテラン議員への浸透がカギ
麻生太郎外相は21日昼、所属派閥の河野グループの臨時総会で、正式に出馬を表明した。午後2時から自民党本部で記者会見し、政権公約を発表する。総裁選は、すでに出馬を表明した谷垣禎一財務相と安倍晋三官房長官との3人の争いになる見通し。故吉田茂元首相の孫である麻生氏は「保守本流」として政策本位の総裁選を訴える考えで、安倍氏への急激な世代交代を敬遠するベテラン勢への浸透がカギとなる。 麻生氏は河野グループの臨時総会で、「5年3カ月前に総裁選に出て以来、この機会をずっと思い続けてきた」と出馬の決意を強調。出馬に必要な推薦人20人が確保できたことを明らかにした上で「立候補できる態勢ができたことは大変ありがたい」と所属議員に頭を下げた。 また、麻生氏は同日午前、自宅前で記者団に「心新たに頑張りたい。選挙は投票箱のふたが閉まるまで分からないので全力でやる」と述べた。 自民党本部での記者会見では、政治主導を目指した中央省庁再々編や地方の活性化策などを盛り込んだ政権公約「日本の底力」を発表。その後党5役のほか党内各派の事務所を訪ねて出馬を報告し、協力を要請する。 麻生氏は小泉政権下で党政調会長、総務相、外務相と要職を務め、郵政民営化などの構造改革を推し進めてきた。麻生氏は「小泉改革は既存のシステムを破壊した功績は大きいが、新しい国家を作るまでいたっていない」として、単なる改革の継承ではなく、改革路線の再構築を目指す考えだ。 政権公約では、日本の進むべき姿として「活力ある高齢社会」「豊かさの実感できる社会」などを提言。基礎教育充実のため義務教育開始年齢の前倒し、高齢者パワーを生かす社会参加支援などを打ち出す。外交では、日米同盟を基軸にアジアの安定と発展を目指すことを盛り込んでいる。 麻生氏の出馬表明を受け、支持する議員らは同日中に国会近くのホテルに総裁選対策本部を立ち上げ、選挙対策を本格化させる。 ≪麻生氏の政権構想要旨≫ 【国家像】 国民が豊かさを実感できる社会、安心できる社会を構築。長寿社会を活力ある明るいものに。先駆者的国家として課題解決▽小泉改革は自民党に限らず既存の政治行政システムの既得権益を破壊したが、破壊から創造へ進めなければならない▽生産性、生活空間、働きがい、学ぶ喜び、安心安全、地域参加、外交の7分野で「豊かさ実感倍増計画」提唱。 【経済政策】 財政再建の道筋を付けるが、財政再建原理主義はとらない。持続的で安定した経済成長が必要。産業界が新技術に挑戦、成長分野に進出できるような大胆な政策減税を実施。徹底的な歳出削減をした後に必要な増税をお願いする。 【教育改革】 満6歳からの就学を1年ないし2年前倒し、その期間にしつけや道徳教育といった情操教育、読み書き計算の基礎教育を徹底。 【外交政策】 日米同盟を基軸とし、アジアの安定を求める。良好な日中関係は二国間の問題のみならず、アジア地域の安定のために不可欠。アジアの海を平和の海にする戦略を堅持。東アジア共同体を日本主導で実現。 【行政改革】 目指す政府は簡素で温かい政府、小さくても強い政府。政府の司令塔機能強化のため、内閣官房、内閣府、総務省などを再編、国家の総合戦略を担う組織を設置。省庁再編と公務員制度改革を行う。 【地方分権】 国と地方の「協議の場」を制度化、首相主宰の会議を設置。道州制を導入、外交防衛などを除き行政権限を10程度の州都に分割。 【党改革】 内閣と与党が一元的に政策決定。党政調各部会の幹部は副大臣・政務官が兼務。場合により政調会長が政策担当相として入閣。 ≪華麗なる経歴、麻生太郎氏≫ 戦後復興の基礎を築いた吉田茂の孫、かつて九州最大の炭坑を経営した麻生財閥の御曹司、元オリンピック選手、妻は故鈴木善幸元首相の三女、妹は寛仁親王妃殿下…。麻生太郎外相は、政界きってのプリンスであり、政策通、経済通としても知られる。 麻生氏は、吉田茂元首相の長女、故麻生和子さんと、元衆院議員の故麻生太賀吉氏の長男として昭和15年に生まれた。学習院大政経学部を卒業後、スタンフォード大などに留学し、家業である「麻生産業」(現麻生セメント)を継ぎ、社長として石炭からセメント業への業種転向を果たした。日本青年会議所会頭を務めた後、昭和54年に衆院議員に初当選した。 スポーツマンとしても知られ、学生時代はヨット部に所属。社会人になって始めたクレー射撃では、モントリオール五輪に出場した。40歳代半ばから始めたゴルフもシングルの腕前だ。このため、フェアプレー精神を尊び、明るくおうような性格で知られる。その一方で「ズルいこと」が大嫌いで、一度言い出したら聞かない頑固者でもある。 マンガの愛読者でもあり、毎週10冊以上のマンガ雑誌を読破する。「マンガは世相を反映する」が持論で、好きな漫画は「ゴルゴ13」「ジパング」「風の大地」など。 経済企画庁長官、経済財政担当相、自民党政調会長、総務相、外相という政治経歴からも分かるように、外交・安保から税財政まで政策の守備範囲は広い。今回の総裁選でも「愚直なまでに政策を訴えたい」と語っており、政策論争で存在感を示したい考えだ。 自ら「性格が平時向きではない」と語るように「有事」に存在感を示すタイプ。昨年の郵政民営化をめぐる政局・解散では中心的な役割を果たした。今年7月の北朝鮮の弾道ミサイル連続発射の際も安倍晋三官房長官と絶妙な連係プレーで国連安保理の非難決議採択を実現させた。 ただ、同じく保守色の強い安倍氏とキャラクターがかぶるためか、各社世論調査支持率では安倍氏に大きく水をあげられており、政策論争でいかに巻き返すかが注目される。 (08/21 12:45)
by unkotamezou
| 2006-08-21 12:45
| 政治 行政 立法
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