2006年 07月 24日
イーストウッド監督が「硫黄島戦」映画化 栗林中将に感銘
イーストウッド監督が「硫黄島戦」映画化 栗林中将に感銘
≪日米兵士"死闘の絆"≫ 死闘を乗り越え、兵士と遺族が戦後60年以上たった今、合同で慰霊祭を行う世界でも珍しい島・硫黄島を舞台にクリント・イーストウッド監督が日米双方の視点から2本の映画を製作中だ。日本側原案の一つ「散るぞ悲しき」の著者、梯(かけはし)久美子さん(44)や米国の研究者の話からこの戦いが残した傷跡の意味を探った。(戸津井康之) ≪家を思う手紙≫ イーストウッド監督は当初、米軍の視点だけで撮る予定だったが、米軍に苦戦を強いた栗林忠道中将を知り、「日本の視点からも描く必要がある」と決断した。 原案の「散るぞ悲しき」が出版されたのは平成17年7月。米軍の猛攻のさなか、東京の家族に送った栗林中将の手紙を、梯さんが3年前に偶然、目にしたのがきっかけだ。 「勝手の下から吹き上げてくる風を防ぐ措置をしてこなかったのが残念です」 2万の兵を率いる指揮官が遺書の中で最も気にしていたのが自宅の勝手のすき間風。 「こんな優しい人が米軍を震撼(しんかん)させた。人間として追ってみたい」。軍人にまったく興味がなかった梯さんの心が強く揺さぶられた。 栗林中将役を演じた渡辺謙さんは、梯さんに役作りの相談をしている。 「優れた戦略家でありながら、部下と同じ食事をし、自宅のすき間風を心配する心優しい彼に真の侍の生きざまを感じます」。渡辺さんの栗林像に梯さんは強くうなずいた。 ≪海兵隊の誇り≫ 「硫黄島戦は海兵隊にとっても、かつて経験したことのない過酷な戦闘だった。だからこそ同じ極限下で死力を尽くした日本兵に強いシンパシーを覚えるのです」 元海兵隊司令部政治顧問で、日米関係論の研究家、ロバート・エルドリッチ大阪大大学院助教授(38)はこう話す。 指揮官自らが最前線に立ち、24人中19人が死傷した。海兵隊が第二次大戦で得た勲章計84個のうち27個はこの36日間の戦いによるものだ。 だが、エルドリッチ助教授にも、どうして日米合同慰霊祭が行われるのか疑問だった。「敵国の兵士同士がたたえ合う心境は正直、理解できなかった。私の父も沖縄戦の兵士でしたから」 疑念が払拭(ふっしょく)されたのは3年前、硫黄島で行われた慰霊祭に参加した時だ。 「年老いた日米の元兵士が涙を流しながら抱き合う姿を見て彼らの思いの一端に触れた気がした。国を愛するがために命を懸けた兵士の思いは、敵であっても相通じるもの。軍国主義ではなく、愛する者を守るための戦いだったのです」 【用語解説】硫黄島戦 硫黄島は東京とサイパン島のほぼ中間に位置し、面積約22平方キロ。日本本土空襲の中継拠点とするため昭和20年2月19日、米海兵隊は硫黄島に上陸を開始。一方、日本陸軍総指揮官の栗林忠道中将は玉砕を覚悟しながらも持久戦に持ち込む奇策に打って出る。750個の地下要塞(ようさい)をトンネルで結び、上陸した米軍を奇襲。「5日で陥落できる」と考えていた米軍の猛攻をかわし、36日間にわたる抵抗を続けた。が、この結果、日本軍約2万1000人、米軍約2万8000人に及ぶ死傷者を出し、第二次大戦中最大かつ最悪の激戦と呼ばれている。 07/24 08:34
by unkotamezou
| 2006-07-24 08:34
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