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皇后陛下のお誕生日に際して

宮内記者会の質問に対する文書ご回答

問一 皇太子ご夫妻の長女愛子さまは来春小学校ご入学の予定で、バスや電車に乗るなど社会体験の機会も増えています。また秋篠宮ご夫妻の長男悠仁さまは一歳の誕生日を過ぎて健やかに成長され、眞子さま佳子さまのお姉さまぶりも紀子さまにとって大きな励みとお聞きします。お孫さまたちの成長ぶりをご覧になり、ご自身の育児体験を振り返りながらの感想とアドバイス、両家との交流の様子などをお聞かせください。

皇后陛下

 四人の孫がそれぞれ両親の許で、健やかに成長していることを嬉しく思っています。眞子、佳子は今年共に高校、中学に進学し、愛子ももう来年は初等科に上がります。悠仁も元気に成長し、この九月には満一歳になりました。前置胎盤の状態で出産の日を迎える秋篠宮妃を案じつつ、東京からの報せを待った旅先の朝のことが、つい先頃のことのように思い出されます。

 私自身の育児体験をふり返り、孫たちの成長ぶりに感想やアドバイスを、との質問ですが、もうずい分以前のことですので……

 ただ、祖母として幼い者と接する喜びには、親として味わったものとも違う特別のものがあること、また、これは親としても経験したことですが、今、また祖母という新しい立場から、幼い者同士が遊んだり世話しあったりする姿を見つめる喜びにも、格別なものがあるということは申せると思います。愛子は、眞子や佳子と遊ぶ時、大層楽しそうですし、眞子と佳子も、愛子を大切に大切にしながらも、大人とは異なる、子ども同士でのみ交せる親しさをこめて相手をしています。悠仁に対しても、二人の姉たちが、丁度小さなおかあさんのように気遣いつつ、しかも十分に手加減を知った無造作さで、抱いたり着がえさせたりしている姿や、小さな愛子が、自分より更に小さい悠仁の傍でそっと手にさわっていたりする姿を、本当に好もしく可愛く思います。

 先日、朝の散歩の折に、小さなジュズダマの茂みを見つけ、戦争中疎開先で遊んだことを思い出し、陛下とご一緒に少し実を採りました。毎年集めると、いつか針の持てるようになった愛子と、首飾りを作って遊べるかもしれません。自然との交わり、折紙や綾取りのように古い遊びなど、私の方から教えてやれるものもありますが、孫たちから教えてもらうもの―例えば、私は陛下がお止めになったのでいたしませんでしたが、一輪車の乗り方など―もあり、こうした幼い人たちとの交わりは楽しく、これからも互いに時を見つけ、会う機会を作っていかれれば嬉しいことと思います。


問二 皇太子さまは六月、十二指腸ポリープ切除手術を受けられました。皇太子妃雅子さまは奈良県や長野県での泊まりがけ公務など、この一年で活動の幅を大きく広げられましたが、宮中祭祀などへの復帰は果たされていません。皇后さまはどのようなときに妃殿下の回復ぶりを実感されていますでしょうか。お二人を見守った感想とともに次代を担うお二人がまず何に取り組むことが大切なのか、お気持ちをお聞かせください。

皇后陛下

 十二指腸のポリープの手術には、細心の注意が必要とされると聞き、大層心配いたしましたが、医療関係者により、全てを無事に運んで頂き、有難いことでした。モンゴルへの旅も無事に終え、その後も障りなく過ごしており、ホッとしています。

 東宮妃の快復についても感想が求められており、また、今後二人がまず何に取り組んでいくことが大切かとのお尋ねもありますが、東宮妃がせっかく快方に向かっていると思われる今は、ただ、妃の快復を祈り、見守り支えていきたいと考えています。


問三 この一年国内外で起きたことで、皇后さまにとって特に印象に残ったことをお聞かせください。皇后さまは昨年に続き草津での音楽祭でレッスンに臨まれ、世界の著名な音楽家と一緒に演奏をされましたが、皇后さまの人生にとって音楽はどのような存在なのでしょうか。また以前からの興味に加え、新たな関心事や趣味があればお聞かせください。

皇后陛下

一(一)三月の能登半島地震、七月の新潟県中越沖地震。局地的に日本の各地を襲った暴風雨や竜巻(昨年十一月)。長く暑かった夏。地球上におこる様々な異常な現象と関連し、地球温暖化が、取り組むべき緊急な課題となって来ていることを感じます。

(二)少子高齢化が進む中で、年金問題、介護問題等に対し、人々の関心が切実であること。

(三)人々の生活の意外に身近なところに危険があることを示す事例が多く、生活の様々な分野における安全性の問題が問われていること。このことにも関連し、各地の病院で現在おこっている医師不足、とりわけ産婦人科医の減少。出産に臨む女性の安全がどのように確保出来るかを深く案じます。

(四)ハンセン病者に在宅医療の道をひらかれた沖縄愛楽園名誉園長の犀川一夫さんを始め、宮内庁参与の平岩外四さん、気象学者で女性科学者の育成と地位向上に尽くされた猿橋勝子さん、日本の分子生物学の先駆者であり、多くの子弟の研究を導き支えられた渡邊格(いたる)さん等、懐かしい方々の訃報。

(五)今年八月の新聞に、原爆投下後の広島・長崎を撮影した米国の元従軍カメラマンの死亡記事と並び、作品の一つ、「焼き場に立つ少年」と題し、死んだ弟を背負い、しっかりと直立姿勢をとって立つ幼い少年の写真が掲載されており、その姿が今も目に残っています。同じ地球上で今なお戦乱の続く地域の平和の回復を願うと共に、世界各地に生活する邦人の安全を祈らずにはいられません。


二 細々とながら音楽を続けて来た過去の年月が最初にあり、気がついた時には、音楽が自分にとって、好きで、また、大切なものとなっていたということでしょうか。十分な技術を持たない私が、内外の音楽家の方たちとの合奏の機会を持てるということは過分な恩恵ですが、美しい音に囲まれた中で自分の音を探っていくという、この上なく楽しい練習をさせて下さる方々の友情に感謝しつつ、一回毎の機会をうれしく頂いています。


三 新しいということではなく、これまでの関心につながるものですが、来年はブラジルの日系移住者の移住百周年に当たります。この度は残念ながら現地にはまいれませんが、日本にあって、陛下とご一緒にこれまでの各国への日系移住者の苦労を思い、移り住んだ国々で、人々が幸せであるよう、祈りたいと思います。それと共に、当時から百年を経た今、日本に生活する三十万を超えるといわれる南米からの移住者たちが、ふるさとを離れて住む困難をよく克服し、日本の社会に温かく受け入れられていくよう願いつつ、心を寄せていきたいと思っています。


この一年のご動静及びお誕生日当日のご日程

 皇后さまは、この一年も皇居内外の行事、式典へのご臨席、福祉、文化施設へのお出まし、国賓を始めとする賓客のご接遇など様々なお務めを果たされました。皇后さまが公的なお立場でお務めになったお仕事は三百件を超え、そのほかにも宮中祭祀十七回、献穀者、賢所勤労奉仕団及び皇居勤労奉仕団へのご会釈が五十二回ありました。

 この一年間の公的な地方行幸啓は、八月の新潟県中越沖地震に伴う被災地お見舞いを始め、第二十六回全国豊かな海づくり大会(佐賀県)、第五十八回全国植樹祭(北海道)、第六十二回国民体育大会(秋田県)、第十一回IAAF世界陸上競技選手権大阪大会(大阪府)の開会式等にご臨席になったほか、地方の文化、福祉を始めとする諸施設をご訪問になり、各地の沿道でお迎えする大勢の人々の歓迎におこたえになりました。この1年に皇后さまが陛下と共に公的にお訪ねになった自治体は一道一府五県、十四市七町一村になります。

 都内においては、陛下に同伴され、日本学士院賞、日本芸術院賞、国際生物学賞、日本国際賞等、学術・芸術関係の式典、民生委員制度創設九十周年記念全国民生委員児童委員大会等の記念行事に出席されたほか、お一方でも全国赤十字大会、フローレンス・ナイチンゲール記章授与式、日本助産師会創立八十周年記念レセプション、平成十九年国際看護師協会会員協会代表者会議・国際看護師協会学術集会に当たって行われた日本看護協会レセプション等にご出席になり、関係者をねぎらわれ、ご懇談になりました。またチャリティ・コンサートを含む各種の公演、展覧会などにもお出ましになり、社会貢献活動や文化・芸術に携わっている人々にお会いになりました。

 御所では、恒例の肢体不自由児関係の「ねむの木賞」受賞者のご接見に加え、各国から帰国した大使の帰朝報告、青年海外協力隊、日系社会青年ボランティア、シニア海外ボランティアの帰国報告、日本赤十字社社長及び副社長による同社の活動状況の報告等をご聴取になったほか、七月には新潟県中越沖地震被災状況について新潟県知事の説明をお聞きになるなど、各種のご説明やご進講をお受けになりました。

 国外では、五月下旬に、天皇陛下とご一緒に、今年がリンネ生誕三百年に当たることから、リンネと関係の深いスウェーデン及び英国からのご招待を受け、それぞれの国でのリンネ記念行事に参加されるために、この両国を公式訪問され、また、この機会に、エストニア、ラトビア、リトアニアを公式訪問されました。英国では、ロンドン・リンネ協会での記念行事にご臨席になったほか、世界初の子供のためのホスピスであるヘレン・ハウスを、今年が同ハウスの創立二十五周年の年に当たることから、創立者の願い出を受けご訪問になりました。ヘレン・ハウス及びその後に創設された青年男女のためのダグラス・ハウスについては、平成十七年に創立者シスター・フランシスが患者と共に来日した際、皇后さまが患者、引率者一同とご懇談になった経緯があり、今回両陛下のご訪英の時期に合わせて式典の日が設けられ、ご出席とお見舞いをなさいました。

 今年のご養蚕は、五月九日の天蚕山つけ作業から始まり、外国ご訪問の期間をはずして、六月十三日に紅葉山御養蚕所でのお掃きたて作業を行われました。皇后さまは、定例のご給桑(二回)、上蔟、初繭掻きの行事のほかにも、桑刻み、わら蔟作り、摘桑、収繭、小石丸出荷、小石丸採種など、幾度も桑園、御養蚕所、野蚕室にお出でになり、蚕の飼育に当たられました。お育てになった小石丸の生糸の一部は、過去十三年同様正倉院に納められ、宝物の復元のために役立てられています。

 宮中祭祀は、恒例の祭祀のほか、武烈天皇千五百年式年祭、文武天皇千三百年式年祭、堀川天皇九百年式年祭の各儀及び外国ご訪問またご帰国につき賢所皇霊殿神殿に謁するの儀に列せられました。

 皇后さまは、週日のほぼ連日のご公務に加え、土日や祝日にもしばしば公的な行事や祭祀をお務めになっておられます。本年三月には口内炎、鼻出血に続き腸壁からの出血がおありになり、三月下旬より週末や祝日を含め断続的に八日ほどお休みをお取りいただきました。ご健康には日ごろから気を付けていらっしゃり、また、陛下のご健康をお案じになり、早朝のご散策やお時間の許す中でのテニス等を努めて陛下と共になさるように心掛けておられます。また、ご自由になるお時間は多くはありませんが、その中で読書をされたりピアノの練習も少しずつ続けておられ、昨年に引き続き草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルにも参加され、アンサンブルを学ばれました。

 十月二十日、皇后さまの七十三回目のお誕生日ご日程は、午前十時半から十二時まで、皇族方始め内閣総理大臣、衆参両院議長、最高裁判所長官、閣僚、宮内庁職員等による祝賀六回、正午、皇族方始めとのご祝宴、午後、旧奉仕者による祝賀二回、ご進講者始めとの茶会、非公式日程として夕刻から敬宮様始め未成年の内親王、親王殿下方のご挨拶があり、最後にお子様方ご夫妻とお祝御膳を囲まれます。


皇后陛下のお誕生日(平成十九年十月二十日)に際して
宮内記者会の質問に対する文書ご回答とこの一年のご動静

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by unkotamezou | 2007-10-20 23:21 | 自然 科學 技術