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海洋法裁判*長期拘束は許されない

 ドイツ・ハンブルクの国際海洋法裁判所が、六月上旬、ロシアに拿捕(だほ)された富山県の漁船「第88豊進丸」について、保証金の減額とともに、船体返還と乗組員全員を無条件に解放するよう命じる判決を下した。

 同時に、昨年十一月、拿捕された釧路の漁船「第53富丸」の船体返還については、ロシア国内の裁判手続きが終了し没収が確定したため、請求の目的が失われたとして訴えを退けた。

 ロシア側から指摘された二隻の違反操業は、重く受け止めなければならない。しかし、道内在住者を含む乗組員をいたずらに長期拘束するのは国際条約の趣旨に反し人道上許されない。

 政府は判決に基づき、乗組員の早期解放をロシア政府に促すべきだ。

 日本が国際海洋法裁判所に提訴したのは、今回の二件が初めてだ。結果は「一勝一敗」に見えるが、判決内容には大きな意味がある。

 水産資源の管理徹底を図るロシアの違反操業の取り締まり強化に伴い、拿捕された乗組員の拘束の長期化が問題になっている。

 一九九四年に発効した「海の憲法」と呼ばれる国連海洋法条約は、拿捕した船舶と乗組員について、合理的な金額の保証金を支払えば、早期に解放するよう求めている。

 ロシアの公式発表によると、昨年、拿捕した外国漁船は約百隻、うち日本船は四隻に上る。ロシアで拿捕された乗組員の拘束期間は、かつて二、三週間程度だったが、ここ数年は長期化し、三カ月以上になる例もある。

 国境警備当局による拘留船が港に次々と係留されていくのに、保証金額の決定や司法手続きは遅れがちだ。これが、拘束の長期化の原因だ。

 ロシア側の保証金の算定は、国境警備や自然保護など地方当局の主張が絡み合い、複雑で時間がかかる。

 この判決を機に、政府はロシアに対し、拿捕漁船に関する国内制度や運用の改善を求めなければならない。

 さらに、国際条約の趣旨に基づいた手続きを地方当局にも徹底するよう要求すべきだ。

 判決は「第53富丸」の船体返還を認めなかったものの、不当に性急な没収は、船体も早期解放を求める海洋法条約の趣旨に矛盾すると指摘した。

 拿捕漁船の没収や、船体価格をも含めた巨額の保証金の算定というロシア側の強硬姿勢は、この裁判で軟化の兆しが出ている。国際ルールの順守に期待したい。

 ただ、拿捕事件は「違反操業」がなければ起こりえない。ロシア側は本格化したサンマ漁でもロシア水域での取り締まり強化を通告している。

 違反操業は結果的に不利益をこうむるだけだ。日本漁船は秩序ある安全な操業を第一に心がけてほしい。

平成十九年八月十日 北海道新聞

海洋法裁判*長期拘束は許されない
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by unkotamezou | 2007-08-10 12:26 | 國防 軍事