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あるべき家族の姿とは 小野田町枝さんに聞く

 福島県で高校生が母親を殺害する衝撃的な事件が起きたばかりだが、昭和55年の「金属バット殺人事件」も日本中を震撼させた。このニュースを移住先のブラジルで知り、胸を痛めた日本人夫妻がいた。フィリピン・ルバング島から生還した元陸軍少尉、小野田寛郎さん(85)と妻の町枝さん(69)だ。事件をきっかけに夫妻は、日本の青少年にキャンプを通じてたくましい心と体をはぐくんでもらおうと「小野田自然塾」をスタート、福島県塙町を中心に続けられた活動も、今年で24年目を迎える。夫とともに自然塾の運営に取り組んだ町枝さんが語る「家族」のあるべき姿とは。(嶺岸善彦)

 金属バット事件を知ったのは、ブラジルに移住して7年目だった。主人が「日本の子供はかわいそうだ。なぜ僕のように家を飛び出さなかったのだろう」とつぶやいた。主人は、教育方針をめぐって両親とソリが合わずに家を飛び出した経験があったからで「飛び出していたら両親を殺すこともなかったのに」とも。

 日本への恩返しではないですが、日本の夏休みに帰国して青少年(小学4年~中学3年)のための自然塾をやろうと。最初は鳥取県で始め、施設整備の必要性などから平成4年に福島県塙町に移した。これまで参加した子供たちは2万人以上。主人はルバング島での生活経験を生かし、ロープの結び方から立木を使ったテントの張り方などを教えました。

 こうした生活術だけではなく「人は一人では生きていけないんだよ。自然の恩恵、社会の恩恵を忘れてはならないよ」と子供たちに語りかけてきた。キャンプで一番人気だったのがナイトハイクだったんですが、原野を夜中に歩くので子供も怖い。でも「友達といっしょなら大丈夫」という支え合いの精神を学べたようです。

 2万人ですから印象深い子もいっぱい。ある男の子が「パイロットになる」と宣言したら、ほかの子が冷やかした。そこで主人が「パイロットになるには体が丈夫でなければだめだ。数学も、英語も勉強しなければならないよ」と助言したら、その子が後年、本当にパイロットになったと聞いて驚きましたね。

 また悪い子のレッテルをはられ、心配したおじいさんが塾に参加させた男の子は、料理が得意だったので班のリーダーになってもらった。そしたらリーダーシップを発揮して頑張ったんです。その子は今、自衛隊の調理担当をしています。

 キャンプを通して思ったのは、日本人は豊かすぎて「日本の心」を失っているんじゃないかと。子供たちも欲しい物は何でも手に入るし、親は親で肌の触れあいを通して子供に接しているのかと疑問に感じました。実は今年から自然塾では子供の募集を一時休止して大人が対象の野外指導者養成のみを行うことにしました。親の教育に重きを置くためです。

 私は母親ですから、女性に訴えていきたい。英国で理想的な母親とは、子供が家に帰ると温かいホットケーキができている、そんな家庭の母親だそうです。子供を産み、無償の愛で育てる母親には神秘的な力、私は魔法の力といっているのですが、そんな力がある。

 主人の母親も息子が生きていると信じ、陰膳を欠かさなかった。ただ祈るだけでなく、行動も起こした。救出を訴えるビラを大阪や東京で配り、捜索隊が結成されるまでになった。ところで今一番応援している母親は、娘の生存を信じて行動する横田早紀江さんですが、祈りはきっと通じるはずです。

 子育ては主人も言いますが、ああしろこうしろではなく、子供に目的や理想を気づかせること。本でもいいし、会話の中でもいいので「これがやりたい」という理想を気づかせてやることが大切だと思います。親が変われば子供も変わります。

 町枝さんは昨年末、日本会議の女性組織「日本女性の会」会長に就任した。「日本の家庭づくり」と「教育再生」を掲げ、全国行脚を続ける。

■金属バット殺人事件

 昭和55年11月、川崎市高津区宮前平の民家で予備校生(20)が両親を金属バットで殴り、殺害した。父親は東大、母親も昭和女子短大、兄は早大卒で、父と兄はともに有名企業に勤めるエリート一家で起きた凄惨(せいさん)な事件は社会に大きな衝撃を与えた。当時の産経新聞は「高級住宅街で夫婦惨殺」「二浪の次男が犯行」「受験のいらだち両親へ爆発」の見出しで大きく報道している。

 福島県では5月、高校3年の男子生徒による猟奇的な母親殺害事件が起きたが、金属バット事件とは時代背景が異なるうえに未解明な部分も多く、単純に比較検証することはできない。町枝さんも「まだ詳細が不明」として福島事件へのコメントは差し控えたが、「ただただ残念です」と漏らした。

(19/06/03 02:33)

【特報 追う】あるべき家族の姿とは 小野田町枝さんに聞く
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by unkotamezou | 2007-06-03 02:33 | 教育 學問 書籍