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ミスター千秋楽
 「ミスター千秋楽」と呼ばれたデービッド・ジョーンズさんが先週、亡くなった。晩年、療養生活を送った米国であす、葬儀が営まれる。

 「ヒョー、ショー、ジョー」。大相撲ファンならずとも楽しみにした土俵上の風物詩だった。名調子は地方場所になると、さらに館内を沸かせた。「アンタハ、ソヤサカイ、ユーショーシハリマシタ」「アンタクサ、ヨカセイセキデ、ユーショーバオサメンシャッタ」。

 「心は日本人」と言明するほど、この国を、相撲を愛した。パンアメリカン航空本社からの副社長ポストの辞令も、「ニホンを去りたくない。スモウが見られなくなる」と固辞、方言にこだわったのも「日本の大切な文化だから」と明快だった。

 頑固なまでの信念は、平成三年夏場所の“引退”まで一貫していた。「四十二キロのトロフィーが場所ごとに重くなった。関取も私も引きどきが大切」。“待った”の声を遮り、三十年間、百六十回余りを重ねた土俵上の儀式に終止符を打った。だれぞやに聞かせたい見事な引き際であった。

 「日本の伝統を背負っているという誇りを感じる力士が好き」と語っていた。そのうちの一人が、元横綱の北の富士。氏の今年初場所十四日目のラジオ解説は痛快だった。横綱朝青龍の独走で前日に優勝が決まり、「もう解説することはない」とアナウンサーを困らせた。十三日目に優勝を許す日本人力士のふがいなさへの憤りがあった。

 「ジョーンズさんが初場所を見ていたら、盛り上がらない千秋楽を残念がったんじゃないかな」と北の富士さん。「日本人力士の姿は日本の若者の姿を象徴する」と語っていたジョーンズさんの洞察力の鋭さに今、ヒョーショージョーを贈らざるをえないだろう。

平成17(2005)年2月10日[木] 産経抄
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by unkotamezou | 2005-02-10 07:12 | 歴史 傳統 文化