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日本・タイ・マレーシア初の海賊対策合同訓練
日本・タイ・マレーシア初の海賊対策合同訓練 国家間の厚い壁露呈

2007-02-03 12:54

 日本、タイ、マレーシア3カ国は2日、マラッカ海峡で海賊対策のための合同訓練を初めて実施した。今年、海上保安庁に海賊対策室を新設した日本が呼び掛けて実現したもので、アジアの海上安全保障に対する日本の積極関与の姿勢を反映した格好だ。ただ、シンガポールの海賊情報共有センターが参加しないなど、国境を越えた犯罪でもある海賊や海上テロを取り締まる“最前線”には依然、国家間の厚い壁が残る現実を露呈することにもなった。

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 《××年×月×日、ランカウイ島北部沖。海賊が日本の商社所有の貨物船を襲撃し、乗組員を人質に取って逃走した》という想定で行われた今回の訓練には、日本から海上保安庁の巡視船「やしま」が参加した。

 まず、遭難信号を受信したタイ当局が関係各国に通報し協力を要請。やしま搭載のヘリコプターも、タイとマレーシアの警察と連携しながら現場に急行し海賊を追跡。マレーシア警察の要員が船内に乗り込み、海賊を拘束し訓練は終わった。

 途中、高波のためタイの船艇が追跡活動に従事できなくなったが、急遽(きゅうきょ)、マレーシアの船艇にタイ警察のメンバーが乗り込んで予定通りの訓練をこなすことができた。

 「ハプニングもあったが、各国間の調整がとてもスムーズにいった」

 現場で指揮した海上保安庁・海賊対策室の鏡信春室長は胸を張った。

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 日本政府が今回の訓練を呼び掛けた背景には、1月に発足したばかりの海賊対策室の存在をアピールする狙いがあった。同対策室は海賊情報を収集・分析するとともに、事件発生の際に関係国の海上保安機関と協力し捜査を行う組織で、まさに、この日の訓練が国際デビューとなった。

 一方、シンガポールの海事関係者の間から失望の声が上がったのは、同国に昨年11月発足した情報共有センター(伊藤嘉章事務局長)が訓練で活用されなかったことだ。同センターはアジアの海賊取り締まりの拠点を目指し、日本のイニシアチブで設立された経緯もある。海賊事件発生後の情報を取りまとめ、関係国の連携を調整する機関として、今回の訓練で重要な任務を果たすことを期待する向きもあった。

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 ところが-。実は、情報共有センターの枠組みにマラッカ海峡沿岸国のマレーシアとインドネシアが加わっていないのだ。両国とも、センターの誘致合戦でシンガポールに負けた“しこり”が残っているとされる。鏡室長は「まだセンターの体制が整っていないので不参加は仕方がない」と説明するが、「依然、マレーシア側がセンターに反発している以上、マレーシアが参加する訓練にセンターを絡めるのは残念ながら不可能だった」と明かす関係者もいる。

 また、海賊事件などに有効に対処する目的で約1年前、マレーシアに鳴り物入りで設置された海上法令執行庁も訓練に加わらなかった。日本は参加を打診したが、手続き上の問題から同意を得られず、関係機関同士の国境を越えた連携が必ずしもうまく機能していない現状をうかがわせた。

 海賊問題に詳しい日本財団の山田吉彦氏は「海賊対策のために設置された情報共有センターや海上法令執行庁が参加しなかったことで、訓練の有用性にも疑問の声が出ている」と指摘している。



【用語解説】マラッカ海峡

 日本向け中東産原油の8割が航行する日本の重要なシーレーン(海上交通路)。2005年には日本のタグボートが海賊に襲撃され、船長らが人質に取られる事件が起きるなど、海賊の多発海域としても知られており、航行の安全確保が急務となっている。
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by unkotamezou | 2007-02-03 12:54 | 國防 軍事