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炭素ナノチューブを「シート状」に 産総研が成功
炭素ナノチューブを「シート状」に 産総研が成功

2006-11-27 19:22

 極細の筒状炭素分子、カーボンナノチューブ(CNT)のうち、単層のものを多数束ね、電気を通す性質などを変えずにシート状に固めることに成功したと、産業技術総合研究所ナノカーボン研究センター(飯島澄男センター長)が27日、英科学誌ネイチャー・マテリアルズの電子版に発表した。

 CNTを産業利用する上で最大のネックだった使い勝手が良くなり、産総研は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業の一環として、日本ゼオンと共同で大量生産する。パソコンやハイブリッド車などの二次電池に取って代わると期待されるキャパシターの電極への応用にも成功し、日本ケミコンとともに実用化に取り組む。

 同センターは2004年、直径数ナノメートル(ナノは10億分の1)、長さ数ミリの単層CNTをシリコン基板からブラシ状に多数生やす高純度、高効率の「スーパーグロース法」を開発した。

 今回、二葉ドン主任研究員らは、このブラシ状集合体をアルコールなどの溶液に浸すと、表面張力と分子間力により、高密度の束になることを発見。この束の上にガラス板を乗せて斜めに押し倒し、シート状に固めることに成功した。また、束にする際に工夫すると、四角い柱や円筒が多数並んだ集合体になった。

 従来のCNTを固める方法は、個々のCNTの形が壊れたり、電気を通す性質が変わったりしたが、この問題を解決。キャパシターの電極に現在の活性炭の代わりとして使えば、ハイパワー、高エネルギー密度、長寿命の実現が期待される。

 畠賢治研究チーム長は「単層CNTは現在、1グラム当たり5万円もするが、今後はキロ単位で量産し、コストを大幅に下げたい」と話している。

【用語解説】カーボンナノチューブ

 炭素原子が六角形の網目状に並んだ黒鉛のシートを筒状に丸めたような分子。直径0・4-50ナノメートル(ナノは10億分の1)、長さ1-数十マイクロメートルで、単層のものとネギに似た多層のものがある。飯島澄男産業技術総合研究所ナノカーボン研究センター長(NEC特別主席研究員、名城大教授)が1991年に発見、命名した。

【用語解説】キャパシター

 化学反応で充放電する二次電池と異なり、電気を電子のまま蓄えたり、取り出したりできる蓄電装置。二次電池に比べ、充放電にかかる時間が短く、寿命が長く、安全性が高い。従来はエネルギー密度が小さく、コンデンサーとして電子機器などに使われたが、技術革新が進み、パソコンのプリンターなどに使われ始めている。
by unkotamezou | 2006-11-27 19:22 | 自然 科學 技術