2006年 11月 22日
支那潜水艦事件の重大な意味
【地球随感】中国潜水艦事件の重大な意味
11/22 23:00 いまだに、あれは一体何だったのかと思う。と同時に、その後の情報を聞くにつけ、ひょっとしたら重大な意味を持つ事件だったのではないかと思うにいたっている。 先月26日、横須賀を母港とする米海軍の空母「キティーホーク」(8万2000トン)戦闘群が沖縄近海の公海上で演習中、中国海軍の潜水艦にひそかに追尾されていた。 潜水艦からの魚雷、対艦ミサイルの射程圏内である8キロ(一説に5キロ)以内にまで接近されても気付かぬまま、中国潜水艦が約8キロ後方で海上に浮上して初めて、空母戦闘軍の哨戒機が発見したという事件だ。 軍事情報では定評のある米ワシントン・タイムズ紙が今月13日に報じて明るみに出た。そしてその翌14日、マレーシアを訪問中のウィリアム・ファロン米太平洋軍司令官が記者会見でその事実を認め、報道の正しさが確認された。 ファロン司令官は会見で、もし空母が対潜演習中であったら「予測不可能な事態にエスカレートした可能性もあった」と述べ、今回の事件が米中偶発戦闘に発展する懸念があったことを率直に認め、事件の重大さの一端を示唆していた。 ■ 副司令官が指揮? これに対し中国外務省の報道官は同日の記者会見で「そのような情報は聞いたことがない」としたが、2日後の16日、香港の新聞「明報」が、香港に本部が置かれる「中国人権民主化運動情報センター」の発表をもとに、「同事件は中国海軍の丁一平副司令官が直接指揮していた」と詳しく報じ、事実であれば、コトの重大さをさらに高めるものとなった。 丁一平副司令官(中将)は1951年2月生まれの55歳で湖南省出身。2003年5月の乗組員70人全員が死亡した「361号潜水艦事故」の責任をとる形で北海艦隊司令官の任を解かれ、海軍参謀長に降格されていたが、今年8月、海軍副司令官に員に大抜擢(ばつてき)され、いずれ海軍司令官になるとみられている大物だそうである。 そんな大物が直接指揮していたのだとすれば、今回の事件は単なる偶発的事件でも、また、問題の中国潜水艦によるミステークでもなく、中国海軍中枢がかかわった戦略的意味を持つ事件ということになる。 ■ 米海軍の弱点露呈か それだけでなく、今回、米空母側が本当に探知できていなかったのだとすれば、米海軍が誇る圧倒的な攻撃力をもつ空母戦闘群が、たった1隻の中国潜水艦により打撃を受け得るものであること、中国潜水艦の静粛性がここまで改善されていたことなどを示したことである。 今回の中国潜水艦は、中国国産の通常ディーゼルエンジンによる「ソン(宋)級攻撃型潜水艦(039A)」とされるが、従来、中国潜水艦のスクリュー音は非常に高く、軍事専門家らの間では、例えは適切ではないが「チンドン屋」とばかにされてもいた。 2004年11月に石垣島付近の日本領海を侵犯した中国海軍の「ハン(漢)級」原子力潜水艦も米海軍や海上自衛隊、台湾の海軍当局らによって容易に探知された。 それが、近代的軍事技術を満載した米空母に探知されないまでに改善されているのだとすれば、一大事である。 もともと米海軍は冷戦時代から潜水艦に力を注がなかったため、対潜能力では日本の海軍自衛隊に頼るという側面があったともいわれる。今回の事件は米海軍の弱点の一つを露呈したものなのかもしれない。 中国の潜水艦能力の向上は、台湾有事に対しても重大な意味を持つ。1996年の台湾海峡危機に際しては、米国は「ニミッツ」と「インディペンデンス」の空母機動部隊2群を派遣し、台湾を威嚇する中国のミサイル演習を中止させた。 しかし、もし中国が台湾付近に潜水艦を展開すれば、米空母機動部隊はすぐには近づけなくなる。潜水艦の危険を排除する「駆潜」作業や、水雷除去作業が必要となるからだ。米軍の介入が遅れれば、中国による台湾急襲による軍事統一は格段に容易になる。 平成18(2006)年防衛白書は増強著しい中国海軍の意図を初めて分析し、中国の目標として、(1)自国の国防(2)台湾有事における外国の介入阻止(3)海洋権益の獲得・維持・保護(4)海上輸送路の保護-を挙げた。 日米はいまこそ中国海軍の能力と意図を分析し、必要な対策や備えを急がなければならないのではと思う昨今である。(矢島誠司)
by unkotamezou
| 2006-11-22 23:00
| 國防 軍事
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