ブログトップ
皮膚から万能細胞 京大チームがマウスで成功
皮膚から万能細胞 京大チームがマウスで成功

≪再生医療実現に道≫

 マウスの皮膚細胞に遺伝子操作を施し、あらゆる細胞に分化する能力がある胚性幹細胞(ES細胞)と同等の万能性を持たせることに、京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授らのチームが成功した。ヒトの体細胞を同じ方法で万能化できれば、卵子や胚を使わずに移植用の細胞が得られる。ES細胞では避けて通れない倫理的問題を回避でき、再生医療の実現に向けた研究を大きく前進させる可能性がある。10日付の米科学誌「セル」(電子版)に論文が掲載された。

 ES細胞には、筋肉や臓器、神経など多様な組織の細胞になる分化多能性と、長期間にわたって増殖する増殖能がある。細胞の核を移植する技術と組み合わせてヒトクローンES細胞を作成できれば、移植後の免疫拒絶反応も回避でき、将来の再生医療の切り札と期待されてきた。

 しかし、生命の萌芽である胚や卵子を壊して医療に利用するため、ES細胞の臨床応用には倫理的観点から根強い反対がある。技術的にもヒトクローンES細胞の作成は、まだ成功例がない。韓国ソウル大グループによる論文捏造事件では、ヒトクローンES細胞作成の難しさとともに、卵子の入手方法など多くの問題点も露呈した。

 山中教授らは、マウスのES細胞で特に重要な働きを持つとみられる24種類の遺伝子を詳しく調べ、このうち4つの遺伝子が分化多能性と増殖能をもたらしていることを突き止めた。

 4つの遺伝子を、ウイルスを使って大人のマウスの皮膚や胎児の細胞から培養した繊維芽細胞に組み込んだ。その結果、できあがった細胞はES細胞と同様の増殖能と、神経や心筋細胞へ分化する分化多能性を備えることを確認した。

 研究チームは、この細胞を「誘導多能性幹細胞」と命名。卵子や胚を用いずに作れるので倫理的な問題を避けられるうえ、患者自身の皮膚から誘導した多能性幹細胞を使うことで、移植後の拒絶反応も克服できると期待される。

 山中教授は「万能性を持たせるための4つの遺伝子は、ヒトでも同じとは限らないが共通しているものもある。ヒトES細胞から万能性遺伝子を特定し、臨床応用に向けた研究を進めたい」と話している。

■ 卵子や胚使わず 倫理問題を回避

 再生医療の切り札とされるES細胞やクローンES細胞の研究は、高い壁に突き当たっている。韓国では論文捏造事件。米国では、ES細胞研究への国の支援を拡充する法案が上院で可決されたが、倫理的問題を理由に反対するブッシュ大統領の拒否権を発動した。

 日本では、ヒトクローン胚研究解禁に向けた文部科学省の指針案が6月にまとまったが、卵子の入手方法に厳格な規定がつけられているため、実質的には身動きがとれない状況が続きそうだ。

 山中教授らの「皮膚細胞からの万能幹細胞樹立」という成果は、こうした行き詰まり状況を打開する可能性を秘めており、世界的に注目されている。

 最大のポイントは卵子や胚を使わずに、ES細胞と同等の万能細胞をつくれること。これにより、倫理問題の制約を受けずに研究ができる。

 脊髄(せきずい)損傷、パーキンソン病、心筋梗塞(こうそく)、重い肝機能障害など、細胞移植以外に治癒、回復の方法がない難病は多い。実際の医療応用までには、さらに10年以上はかかると予測されるが、着実な前進は多くの難病患者にとって光明になる。

(08/11 09:48)
[PR]
by unkotamezou | 2006-08-11 09:48 | 自然 科學 技術