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安保、異端から「普通の国」に
安保、異端から「普通の国」に

 【ワシントン=古森義久】日米両国首脳が29日、「新世紀の日米同盟」をうたう共同文書を発表する背景には過去5年余り、ブッシュ政権を触媒に小泉政権下の日本が自国の安全保障という面で戦後の異端から離れ、「普通の国」の方向へと着実な歩みを重ねた軌跡があるといえる。

 米国の歴代政権でも現ブッシュ政権は日本が自国の安全保障や対外的な姿勢という面で「普通の国」になることへの期待を初めて明確にした。

 戦後の日本は憲法第9条の下、自国の防衛にも制約を課し、自国領土外では自国民の生命や自国の利益、安全を守るためでも戦闘にはかかわれないという徹底したパシフィズム(無抵抗平和主義)の枠組み内に自らを置いてきた。自国の安全も含む国際的な安全保障のためにさえ、他国と防衛行動をともにする集団的自衛権は行使できないという点でも日本は全世界で類例のない「異端の国家」「ハンディキャップ国家」となってきた。

 米国の歴代政権も戦後、日本が安保面での自縛を保ち、同盟国の米国に依存しきることを奨励する政策をとってきた。90年代の民主党クリントン政権も日本の憲法改正や集団的自衛権の禁止解除には難色を示し、「普通の国・日本」には反対の立場を示してきた。

 ところが2001年に誕生したブッシュ政権は日本が日米同盟の枠内にとどまる限り、安保面でより普通となり、より強くなることをむしろ求める姿勢を明確にした。日本が米国と民主主義の価値観を堅固に共有する限り、より対等で、より成熟したパートナーとして安保分野での対外的な影響力をも拡大することを求めるようになった。日本の「普通の国」化が日米同盟の強化を通じ米国自身の国益を利するという思考からだが、過去の政権にくらべ、日本を成熟した民主主義の同盟相手としてより信頼するという面も否定できない。

 ブッシュ政権は本来、保守主義に立ち、対外政策では国家主権、軍事力、民主主義の価値観などを歴代政権よりはずっと顕著に重視する。その結果、価値観を共有する国家同士が有事の軍事協力を誓いあう同盟のきずなも当然、重要視することになる。対日同盟の強化はその帰結でもあった。

 同盟強化では両国間の均質性が自然と求められ、日本の安保面での異質性、特殊性、対米同盟での片務性も減っていくこととなった。日本が対テロ戦争への協力としてインド洋に自衛隊を送り、イラクでの米国の民主化闘争を助けるために自衛隊を駐留させ、国内での有事法制を整備し、米国との共同のミサイル防衛に着手し、中国の軍拡や台湾海峡の危機への懸念を米国との共通戦略目標として明示していったのも、みなそうした流れであり、「普通の国」へ向かう動きとなった。ブッシュ政権はさらに日本の集団的自衛権行使や憲法第9条改正への動きを奨励することをためらわない。

 小泉・ブッシュ時代の5年余、ブッシュ政権のこうした期待や要請が触媒となって小泉政権が動いた面が大きい一方、日本自体の安保面での対外認識が異端から普通へと変わったことも「世界の中の日米同盟」の実体を固める結果を招いた。

 北朝鮮の核兵器開発や日本人拉致の自認、韓国の竹島不法占拠、中国の大軍拡や東シナ海での恫喝(どうかつ)的な行動などは、日本側の戦後パシフィズムを切り裂き、米国との協力を強めて防衛や抑止の実効措置をとることへの世論を高めたわけである。
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by unkotamezou | 2006-06-30 05:00 | 國防 軍事