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対「テポドン二号」
対「テポドン2号」

■北朝鮮の意表をついた麻生外相

 北朝鮮がミサイル「テポドン2号」の打ち上げを準備しているようだ。諸情報を総合すると、ミサイルに燃料装置が取り付けられた。情報衛星の能力は各国の極秘事項であるが、アメリカはもとより、日本も、さらにロシア、フランスもミサイルに燃料装置が取り付けられたならば、その事実を数時間以内に把握することができるはずだ。

 問題は北朝鮮が各国の情報衛星にミサイル発射場を見られていることを織り込んだ上でゲームをしていることだ。衛星写真で「テポドン2号」に燃料装置が取り付けられたことを把握しても、実際に燃料が注入されているかどうかはわからない。これを知るには、北朝鮮の「お友達」に教えてもらう他に術はない。インテリジェンスの業界用語でいうところのヒュミント(人的諜報(ちようほう))工作になる。

 率直に言って、現在、対北朝鮮のヒュミント能力がいちばん高いのは中国であるが、冷え切った現下の日中関係を考えるならば、中国が真実を日本に教えてくれる可能性はまずない。

 燃料が注入されてから一定時間(筆者が現役外交官をつとめていた時代には72時間程度とする説が有力だった)以内に発射しないと、作業をやり直さねばならない。危機的状況にある北朝鮮がミサイル燃料を無駄にするとは思えない。従って、今後、数日以内にミサイルが発射されなければ、今回の騒動は北朝鮮の陽動作戦、あるいは北朝鮮が日米の警告を聞き入れ、自粛したということになる。

 なぜ北朝鮮はこのような挑発を行うのか。「求愛を恫喝(どうかつ)で示す」という北朝鮮の外交文化を押さえておけば、その読み解きは難しくない。北朝鮮は、アメリカ、日本との対話を真剣に望んでいるのである。最近、北朝鮮からの「ラブコール」がいくつか出ているが、そのうちの2つを披露したい。

 まず、事実上の北朝鮮政府公式HPである「ネナラ(わが国)・朝鮮民主主義人民共和国」に掲載された、朝鮮人民軍空軍司令部の声明だ。〈米帝の戦争狂は6月10日、わが共和国の水域上空に戦略偵察機を侵入させるという、重大な軍事的挑発行為を働いた。(中略)現実は、われわれに対する先制攻撃を公然と口にしている米帝の戦争狂が、侵略戦争の導火線に火を点じるため、いかに悪辣(あくらつ)に狂奔しているかを示している。朝鮮人民軍空軍は、米帝がわれわれの管轄水域の上空に侵入して空中スパイ行為を重ねるならば、断固たる懲罰を加えるであろうことを厳粛に警告するものである。〉

 2番目は崔泰福(チョエテボク)朝鮮労働党書記が「万が一、敵たちがついに戦争の火ぶたを切れば、侵略者たちを無慈悲に撃滅掃討し、朝鮮民族の胸にしみこんだ恨みを必ず決算するだろう」(18日asahi.com)と述べたことだ。北朝鮮が挑発的言辞をすれば、米国や日本が「こりゃかなわん」と言って、必ず対話に応じるとにらんでいる。

 事実、北朝鮮が状況を悪化させると、これまで日米はさまざまな留保条件をつけつつも北朝鮮との対話に応じてきた。筆者はこの辺で日本は「求愛を恫喝で示す」という北朝鮮のゲームに付き合うのをやめるべきと思う。この機会に北朝鮮に虚勢を張らずに日米に素直に求愛した方が北朝鮮の国益につながることを思い知らせる必要があると考える。

 この点で麻生太郎外相の反応が冴(さ)えている。麻生氏は18日、北朝鮮が「テポドン2号」を発射すれば2002年9月17日の日朝平壌宣言違反になるとの認識を明確にした。これは麻生氏が政治家として重大な決断を示したということだ。

 日朝平壌宣言は取引文書で、北朝鮮が拉致問題と大量破壊兵器(核・ミサイルなど)の生産をしないならば、日本は北朝鮮と国交を正常化し、経済協力を行うというものだ。北朝鮮がミサイルを発射すれば、日朝平壌宣言の前提条件がなくなる。従って、日朝平壌宣言の合意にもはや拘束されなくなる。平たい言葉で言えば、日本は今後、北朝鮮にビタ一文のカネも出さないということだ。

 北朝鮮がミサイルを発射した場合の対抗措置として、万景峰(マンギョンボン)号の入港禁止や経済制裁を行っても、北朝鮮はすでにそのことを織り込んで今回のミサイル恫喝外交を組み立てている。しかし、日朝平壌宣言が崩れることは想定していない。ここに手をつけるのだ。頑張れ、麻生太郎外相!
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by unkotamezou | 2006-06-22 22:36 | 國防 軍事