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皇室典範改正見送り公算 政局回避? 真意は… 安倍氏ら説得
皇室典範改正見送り公算 政局回避?真意は… 安倍氏ら説得

首相「政争の具にしない」

 「皇室典範改正については、じっくりと時間をかけて議論し、政争の具にしないように慎重に取り運んでいきたい」

 八日の衆院予算委員会で、前日までの皇室典範改正への強い意欲を翻し、慎重な言い回しに終始した小泉純一郎首相。その姿を見守っていた閣僚たちは、目配せして安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 首相が慎重姿勢に転じた理由は言うまでもなく、「秋篠宮妃ご懐妊の兆候」の吉報だった。皇室典範改正をめぐり、自民党内では、賛成・慎重両派の対立が日増しに深刻化し、「予算成立後は政局か」とまでささやかれていただけに、「冷静になって考える契機となった」(閣僚経験者)との声も上がった。

 だが、首相は改正見送りを明言したわけではない。その真意は測りかねるだけに今後も皇室典範論争はくすぶりそうだ。

◆◇◆

 NHKが「紀子さまご懐妊」の速報を流したのは七日午後二時過ぎ。衆院予算委で、民主党の岡田克也前代表の質問を受けていた首相に秘書官からメモが差し入れられたのはその直後だった。首相はサッと顔色を変え、「本当か!」。情報は周囲の閣僚にも伝言ゲームのように伝わった。

 同時刻、首相官邸はそれ以上の大騒ぎになっていた。この時点で羽毛田信吾宮内庁長官にもこの情報は伝わっておらず、まさに「寝耳に水」。関係者は事実確認に追われた。午後四時すぎの安倍晋三官房長官の記者会見までに宮内庁から入った連絡は「今日中に発表する」という内容のみ。安倍氏は「宮内庁の発表を待ちたい」と繰り返すしかなかった。

 午後五時すぎ。国会から首相官邸に戻った首相を迎えたのは、安倍氏、二橋正弘官房副長官、柴田雅人内閣総務官だった。「本当なのか」と繰り返す首相に、安倍氏は切り出した。

安倍氏「誠におめでたいことですが、これで皇室典範改正はよくよく慎重にしなければならなくなりました」

首相「なぜだ」

安倍氏「もしお子さまが男子でしたら、皇室典範改正は、このお子さまから継承権を奪ってしまうことになります。そもそも皇太子さま、秋篠宮さまに次ぐ皇位継承者がいなくなることが、皇室典範改正の趣旨だったのではないですか」

 首相はしばらく考えたあと「そうか」とだけ答えた。

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 「首相の皇室典範改正への意欲は並々ではない。すでに目つきは郵政モードだ」

 こんな情報が自民党内を駆けめぐったのは、一月中旬だった。郵政民営化法案で対立した平沼赳夫元経産相らが改正反対を声高に主張したこともあってか、首相のボルテージは上がり続け、「仮に愛子さまが天皇になられたときに、そのお子さまが男子でも(皇位継承を)認めないということになる。それを分かって反対しているのか」と語るまでになった。

 「世論が二分し、皇室のご意向も分かれている現状を考えれば、無理に改正すべきではない」

 改正に慎重だった麻生太郎外相は一月下旬にひそかに首相に会い、説得を試みたが、首相は頑として譲らなかった。

 このような首相の姿勢が漏れ伝わる中、「思想・信条を問われるだけに、首相が閣議決定を強行したら辞任する閣僚も出かねない」との声も漏れ始めた。麻生氏や中川昭一農水相、杉浦正健法相らが相次いで典範改正に慎重姿勢を表明したのは、閣内不一致による政権解体といった事態を回避したいとの思いがあってのことだった。

 首相の後見人である森喜朗元首相も動き出した。閣僚や党幹部に極秘に接触し、「皇室に関する案件で政局にしてはいけない。何とか首相を説得してほしい」と頭を下げて回った。

 それだけに首相の八日の答弁は、自民党関係者には「これで政局は回避された」と映ったのだ。

 だが、「首相はまだ今国会での法案提出をあきらめていない」(政府高官)との声も少なくない。首相自身も八日夜、記者団に「政争の具にはしない。議論していけば常識的な線に落ち着く」と述べ、法案提出に含みを持たせた。
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by unkotamezou | 2006-02-09 05:00 | 皇室