2006年 01月 04日
日の丸ジェット開発加速 小型で“すきま”狙う/燃費向上で存在感
日の丸ジェット開発加速 小型で“すきま”狙う/燃費向上で存在感
国産の旅客機開発が今春以降、熱を帯びそうだ。米国のボーイングと欧州のエアバスの二大勢力に席巻されてきたが、アジアを中心に世界的に航空機需要の高まりが予想され、三菱重工業などが「日の丸ジェット」の開発に本格的に着手するためだ。(比嘉一隆) 三菱重工が進める試作機「ミツビシ・ジェット(MJ)」。当初の客席数は「三十-五十」と控えめだったが、昨年秋に「七十-九十」へと中型機に転換した。平成二十一年末の羽田空港再拡張に伴う発着枠拡大で「百席以下」の地方航空路線が拡大するなど、今後二十年間にこのクラスだけで四千七百機もの世界需要があると見込まれるからだ。計画変更にあわせ、十八年度は財務・技術面を含めた概念設計も見直す。ライバル機より最大で21%燃費を向上させる点もポイントとなる。 川崎重工も、十九年度に飛行予定の次期固定翼哨戒機(PX)・輸送機(CX)を量産化する過程で培ったノウハウを転用、百二十五席サイズの旅客機開発に乗り出す。いずれの計画も、ボーイングとエアバスが二分する「二百席以上」の水準をあえて避けたのがミソだ。 また、富士重工業は小型航空事業を拡大、十八年から米エクリプス社向けの主翼量産を開始するなど、将来的に「スバル・ジェット」の実現につなげたい考えだ。ホンダも独自開発の定員六人の「ホンダ・ジェット」の実験飛行に成功済みで、市場投入の時機をうかがっている。 日本航空機開発協会の調べによると、ジェット旅客機の運航機数(二十席未満除く)は、経済成長の続くアジアが牽引(けんいん)し、二〇二四年に現在の二倍の三万機を上回る見通し。燃料価格の高騰が航空会社の経営を圧迫する中、丈夫で軽く燃費向上につながる日本企業の技術の存在感は高まっており、二〇〇八年に納入が始まるボーイングの新型旅客機「787」では三菱重工が主翼、川崎重工が前部胴体、富士重工が中央翼とそれぞれ主要部分の製造を担う。 戦後、GHQにより航空機の研究・生産を禁止された時期もある日本メーカーだが、技術面では海外勢と肩を並べるレベルになっているわけだ。 昭和四十年以降、百八十二機が製造された戦後初の国産旅客機「YS-11」は平成十八年にすべて引退。日本の空から「日の丸旅客機」は消えるだけに、相前後してスタートする国産ジェット旅客機開発に寄せられる期待は大きい。 ただ、国産旅客機を産業として確立するには政府の支援が必要となる。補助が手厚過ぎれば「市場の競争を乱す」との批判が海外からあがり、新たな貿易摩擦の火種になりかねない。政策金融を担う政府系金融機関の統廃合が決まった中、「航空会社の長期資金の手立てが不透明」(航空アナリスト)との指摘も克服する必要がありそうだ。
by unkotamezou
| 2006-01-04 05:00
| 自然 科學 技術
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