ブログトップ
「あかつき」成功で評価高まる

 日本の宇宙関連産業が世界的に存在感を高めている。海外から衛星やロケット打ち上げを受注するなど実績をあげてきたところに、5月には金星探査機「あかつき」を搭載したH2Aロケット打ち上げ成功によってさらに評価が高まる。かつてはロケット打ち上げに連続して失敗し、厳しい状況にあった宇宙関連各社の海外ビジネス展開に向けて花が開き始めているともいえる。ただ満開に向けては、国の宇宙産業政策が定まらないとの不安も残る。

 H2A打ち上げに成功したばかりの三菱重工業の川井昭陽取締役は「『あかつき』打ち上げ成功は海外も注目しており、海外ビジネスが進む。部材輸出も10年程度で倍増させたい」と意気込む。

 他社も「現在700億~800億円規模を今後10年で1500億円に倍増させる」(三菱電機)、「平成20年度に500億円規模を31年度までに1000億円規模に引き上げる」(NEC)と、宇宙ビジネスを手がける各社の事業計画は強気だ。

 その背景には、海外からの衛星やロケット打ち上げ受注という実績に加え、昨年の国際宇宙ステーションに物資を届けた物資輸送補給機「HTV」が宇宙空間で世界初の自動ランデブーに成功したことも大きい。米国のISS向け輸送機メーカーは同システムを製造した三菱電機に9機分のシステムを約60億円で発注したほどだ。

 国内衛星メーカートップの三菱電機によると、同社の宇宙ビジネスは「平成10年代前半までは海外の静止衛星商談では提案さえさせてもらえなかった。実績のないメーカーからの提案は時間の無駄だったから」(三菱電機宇宙システム事業部の稲畑広行部長)という状況にあった。

 その雰囲気が変わったのは平成18年に打ち上げられた国の多目的衛星「ひまわり7号」と20年の国内衛星通信事業者の「スーパーバードC2号機」を連続して同社が受注、製作し、実績ができてからだ。

 この実績をベースに平成20年12月にはシンガポールと台湾の業者から商用通信衛星「ST-2」の製作を受注した。バスと呼ばれる衛星本体部分も含めた海外からの受注は日本の宇宙産業に新たな一歩を記した。

 これに続き平成21年1月には三菱重工が海外初の案件として韓国の多目的実用衛星打ち上げを受注したのも17年以降のH2Aロケットの連続打ち上げ成功が評価されたからだ。

■官民一体の体制不可欠

 日本の宇宙技術のレベルを示す事例はまだある。今月13日には小惑星「イトカワ」の探査機「はやぶさ」が7年ぶりに地球に帰還。はやぶさに搭載された新型イオンエンジンの耐久性も実証される。同エンジンを製作したNECは米国市場開拓に向け、米エアロジェットと共同開発することを決めた。

 民間の相次ぐ実績に加え平成20年には宇宙開発利用を打ち出した宇宙基本法が施行され、日本の宇宙ビジネスの明るい未来を示すかにみられた。

 ただ、基本法施行1年後に誕生した鳩山政権の宇宙開発政策は一貫しなかった。昨年11月の事業仕分け第1弾では、官民共同開発の中型ロケット「GX」開発計画をエンジンを除いて中止を決定。HTV開発や平成24年度以降の衛星打ち上げ予算についても1割削減を決めた。

 アジア唯一の参加国として存在感を高めているISSの利用期間延長をめぐっても、欧米各国が早々に延長方針を打ち出したのに対し、日本はまだ審議会での議論が続いている状態。

 一方で、政府の宇宙開発戦略本部は5月の会合で宇宙産業の推進方針を決定。現在7兆円弱の広義の宇宙産業規模を10年後に15兆円に倍増させる方針を打ち出した。政府がブレーキをかける中でアクセルを踏んだ形で、姿勢が定まらない。

 「世界の競合各社が国のバックアップを受けている中で、民間だけでは戦えない」(大宮英明三菱重工社長)ことは事実。実際、三菱電機の衛星もNECの新型イオンエンジンも、国の開発プロジェクトによって生まれた技術だ。H2Aロケットも国主導で開発された後に民営化された。

 「途上国向けなどでも官民一体のビジネス推進が必要」(NEC宇宙システム事業部の木下伸也部長)との声が聞かれる中、菅政権は宇宙産業をどこに導くのか。三菱総合研究所の羽生哲也宇宙情報グループ主席研究員は「スペースシャトルの退役が決まり、日本の宇宙産業には大きなチャンス。官民一体でチャンスを拡大すれば海外のメジャーマーケットに出て行ける」と指摘する。

平成22年6月10日8時15分

宇宙産業 輝き出す星 「あかつき」成功 高まる評価
[PR]
by unkotamezou | 2010-06-10 08:15 | 自然 科學 技術