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ものづくりが日本を救う(上)岡野工業社長岡野雅行

■辛抱で身に付く 芸の道

 「まじめにコツコツやる人間がバカをみる世の中はいつかは滅びるよ」-。世界シェア100%を誇る「痛くない注射針」などの開発で“ものづくり・日本”の底力を世界に見せつけた“江戸っ子職人”が混迷する日本をしかる。

--昨年11月、参院が発行する「立法と調査(別冊)」でもユニークな提言を

岡野 そう。「国家公務員制度改革とキャリアシステムに関する意見調査」だろう。官僚のキャリアシステムなんかこの時代、おかしいと思わないかってね。お勉強ができて難しい試験を通ってきたからといって、財務省なら30歳を過ぎれば税務署長だろう。自分の父親みたいな経営者が相手の“お代官さま”で、下にも置かない扱いを受けるわけだから勘違いするに決まってるよ。国益より省益、そして天下りなど、自分のことしか考えない官僚が育つのは当たり前だよ。

--その通り

岡野 上がそんなんだから、一般職員にも公僕意識なんかありゃしない。労働組合を盾に、ラクしてサボることしか考えない。だから社会保険庁なんか上から下まで長い間、インチキやってこられたんだ。国民をバカにすんのもいい加減にしろってね。

--本当にひどすぎる

岡野 中小企業に対してもそうだよ。イジメ過ぎだよ。技術立国だの大国だのといったって、日本から町工場がなくなったら日本は滅びるんだ。技術開発で苦労してさらに資金繰りでも苦労させられてさ。今回の総額2兆円の給付金だって、その1割の2000億円ぐらい、(東京の)大田区や墨田区など「ものづくりのメッカ」を応援したらどうだよ。生き金か死に金か、そこんとこがお役人にはわからない。だから日本ではベンチャーが育ちにくいって言われるんだ。失敗は成功の元、七転び八起きって言うだろう。

--目先の判断が多い

岡野 それは官僚に限らず日本の今のエリートの欠点なんだよ。彼らは、受験問題で勉強してきているから、模範解答のある問題には強いが、解答のない、未知の問題にはどう対応していいかわからない。“頭はいいけど、利口じゃあない”ってやつだな。

 しかも、度胸がないから難問はいつも先送りじゃないか。どんな問題でも自身で考え、解決しようというチャレンジ精神が必要なんだよ。

--その好例が痛くない“注射針”

岡野 そう。蚊の口吻(こうふん)(口さき)と同じ太さの注射針な。それまでの注射針は、細いパイプを切断してつくっていたんだけど、先端が200ミクロン、根元は350ミクロンと、細いだけじゃあなく、液がスムーズに注入できるよう先端と根元の太さに差をつけるとなると従来の方法ではできない。

 そこでオレは「じゃあ、1枚の薄い板を丸めたらどうなんだろう」と考えてね。試行錯誤の連続、大変だったよ。

--そうでしょう

岡野 口紅のケースやライターなどに使う“深絞り”という技術で小型化、軽量化に成功したリチウムイオン電池のステンレスケースもそうだった。携帯電話の普及に貢献したけど、膨大な工程があって図面を描いたってその通りにはいかない。結局、アドリブでやったらうまくいった。未知の世界ではまず「直感」。最初からマニュアルや図面があるなら誰も苦労はしないって。

--「直感」ですか

岡野 音楽でいうとジャズのアドリブのようなものだな。だけどそれはしっかり積み上げた基礎と失敗を含めた多くの経験がなければ出てこない。

 人間、一人前になるには20-30年かかるけどその間、しっかり他人さまや親方などの仕事を見て覚え、そのうえで自分なりの工夫と失敗の繰り返しを繰り返していれば、自然に直感が生まれる。落語じゃあないけど、

「泣き笑い 辛抱で身に付く 芸の道」だよ。

--うまい!

岡野 だからオレは今時の若い人が心配なんだ。パソコン、パチャパチャやって額に汗せず、金もうけするのが格好いいみたいなのがいるだろう。人間、額に汗して働くことや、ものづくりを忘れて、楽な金もうけに走ったらおしまいなんだよ。(押田雅治)

【プロフィル】岡野雅行

 おかの・まさゆき 昭和8(1933)年2月、東京・東向島生まれ。76歳。高等小学校中退。家業の金型工場を継ぎ、独自のプレス加工や量産プラントなどを研究。従業員5人の小規模工場ながら、従来のプレス技術では不可能とされてきた「リチウムイオン電池ケース」や「痛くない注射針」の開発で“世界の岡野”として脚光を浴びる。著書に『人生は勉強より「世渡り力」だ!』など。歯にきぬ着せぬしゃべりから講演でも活躍。

21.4.21 03:34

【話の肖像画】ものづくりが日本を救う(上)岡野工業社長・岡野雅行
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by unkotamezou | 2009-04-21 03:34 | 産業 經濟